続エリザベート – Elisabeth

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前回に続いて、ミュージカル・エリザベートについてお話します。
この作品の中で、重要な役割を担うもう一人の登場人物、それが『トート』です。ドイツ語では ”der Tod”、死神を意味します。(日本版では『黄泉の帝王』となっています)その名の通り、物語を通して、エリザベートを死の世界へ誘惑しようとするのです。

エリザベートの宮廷での生活は、夫フランツ・ヨーゼフとの関係も含め、絶望の連続でした。
何も自分で決められず、自由にならず、姑ゾフィーはエリザベートのあら探しばかり。夫はそんなエリザベートの味方になってくれない。。。彼女が、そんな状態から逃げ出したい!死んでしまった方がまし!と思う時、トートは彼女のもとに現れ、死の世界へと誘惑するのです。エリザベートは死への憧れを持っていましたし、トートもエリザベートを愛していた。でも彼女は、誘惑のたびにトートを退けました。生への希望も忘れてなかったからです。

しかし、最後にエリザベートはトートに、つまり死に自分を委ねてしまいます(実際にはエリザベートは暗殺されます)。そして、二人は結ばれるのです。

そこで二人が歌う内容を抜粋して見てみましょう。

Tod:Ich hab mich so nach dir gesehnt. Lass mich nicht warten..
私は君をずっと想ってきた。だからもうこれ以上待たせないでほしい

Elisabeth: Lass mich befreit sein und geborgen.
Lösch die Erinnerung in mir aus . Gib meiner Seele ein Zuhaus !
私を自由にして、そして守ってほしい

私の過去の思い出を消し去って、心に安らぎを与えてほしい二人はお互いを求め、心はひとつになったように見えます。でもすべてがひとつになったわ けではありませんでした。

トートは『僕は君だけのもの』と歌いますが、エリザベートは『私は私だけのもの』と歌い、トートの腕の中に落ちます。エリザベートは最後までエリザベートであり、誰のものにもなりませんでした。そんな彼女を、私はとても魅力的に思いますが、トートはどう思ったのでしょうか?

(記:ドイツ語講師 池嶌 千絵)